北大教授試算「接触8割減で感染急減」の図がちょっと雑ではないか

いよいよ緊急事態宣言が出されましたが、その決断の根拠となったのが厚生労働省クラスター対策班のメンバーで北海道大学の西浦博教授によるシミュレーションだとされています。この図はテレビでもよく見かけます。

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西浦博教授の示した図
 西浦教授は数理モデルと呼ばれる手法を用いて感染状況を推計する理論疫学の専門家。
 教授の試算では、外出を欧米に近い形で厳しく制限し、人と人の接触を八割減らす対策を取れば、十日~二週間後に感染者が一日数千人のピークに達しても、その後に対策の効果が表れ、急速な減少に転じる。

https://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2020040802000061.html

図では80%接触減の仮定で新規感染者数が急減するのは経過日数30日とあるのに、説明では10日~2週間後から減り始めるように読め、よくわからない。
NHKではもう少し詳しい説明がある。

西浦教授によりますと、接触を8割減らすことができれば、2週間ほどで1日の感染者数の数が落ち着きはじめ、さらに2週間たった1か月後には目に見える効果が出てくることが期待できるということです。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200408/k10012375081000.html

しかし、2週間ほどで1日の感染者数の数が落ち着きはじめるという経過を図は示していない。

だいたい30日目で急減するのも変だ。接触8割減を開始したのが経過日数0日だとして、それ以前は接触10割だと仮定しても、接触の結果としての新規感染者が経過日数30日まではそれまで通り増え続け、31日からピタッと減るなんてありえない。感染者と接触して新たに感染したとしても、それが新規感染者として確認されるまでの日数は人によって幅がある。早く発症して陽性確認される感染者もいれば、接触からかなり経ってから発症する感染者もいる。さらにその感染者が他に感染させる時点もきっかり2週間ということはなく幅がある。
8割接触減で効果が出るとしても、図のような不連続な経過をたどることはなく、なめらかなカーブを描くはず。
図は緊急事態宣言と行動自粛の効果を誇張して国民に伝えることを目的としているのかもしれない。