児童虐待に関する警察庁統計(2019年)

警察庁の統計によると、2019年に全国で摘発された児童虐待事件は1972件、被害にあった児童は1991人、検挙された人数は2024人だった。いずれも前年比で約1.4倍となっている。
虐待の様態別には下表のとおり。

様態 事件数 被害児童数 検挙人員数
身体的虐待 1641件 1654人 1682人
性的虐待 246件 248人 248人
怠慢又は拒否 35件 36人 43人
心理的虐待 50件 53人 51人
全体 1972件 1991人 2024人

身体的虐待のうち無理心中事件は未遂も含め33件、被害児童数38人、検挙人員数36人、身体的虐待のうち出産直後の殺人事件は未遂も含め6件、被害児童数6人、検挙人員数6人、怠慢又は拒否のうち出産直後の遺棄事件は9件、被害児童数9人、検挙人員数9人であった。

身体的虐待には、殺人、傷害、逮捕監禁、暴行、暴力行為等、強要、保護責任者遺棄、現住建造物等放火、重過失致死傷、未成年者略取、青少年保護育成条例違反、覚せい剤取締法違反を含み、性的虐待には、強制性交等、強制わいせつ、児童福祉法違反、児童買春、児童ポルノ法違反、青少年保護育成条例違反、迷惑防止条例違反、怠慢又は拒否には殺人、保護責任者遺棄、重過失致死傷、学校教育法違反、傷害(幇助)・暴行(幇助)、青少年保護育成条例違反を含み、心理的虐待には、暴力行為等、強要、脅迫、監禁、児童福祉法違反、自殺教唆を含む。重複は同一の罪種であっても内容によって様態の分類が変わるため。
罪種別の検挙人員数は下図のとおり。
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検挙人員の圧倒的多数は傷害・暴行、人員数を大きく開けて強制性交等・強制わいせつが続く。検挙人員の被害児童との関係は父親等が多数。

次に罪種別に関係の割合を見る。
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傷害・暴行や強制性交等・強制わいせつでは父親等が加害者である場合が多いが、殺人やネグレクトでは母親等が加害者になる傾向がうかがえる。

次に被害児童との関係をより詳細に見てみる。
まず、未遂を含む殺人事件での被害児童との関係の割合が下図である。
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殺人事件の圧倒的多数が実母によるものだとわかる。実父の場合がそれに続き、内縁の父等の場合も見受けられる。一方で母親等のうち内縁の母や養母・継母による殺人は見られない。実母以外の母親等の場合、そもそもの母集団が小さいという影響もあろうが、社会文化的な影響もあるかも知れない。
殺人事件については、無理心中の場合、出産直後の産後鬱と見られる場合、それ以外の場合で集計されている。
出産直後の殺人の場合、当然加害者は実母であるが、2019年の件数は8件、うち5件が既遂であった。無理心中と無理心中・出産直後以外に分けて関係の割合を見たのが下図である。
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無理心中を図るのは、実母と実父のみであり、3分の2が実母であった。無理心中・出産直後以外の場合が実母が大きな割合を占めている。
既遂事件に限定したのが下図である。
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実母の割合がやや高くなるものの実母が多数を占める傾向は変わらない。無理心中・出産直後以外の場合の殺人事件で実父が既遂に至ったのは0例になっている。


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傷害・暴行ではどうか。実父の場合が約半数を占め、実母がそれに続く。実父・実母以外の場合では養父・継父や内縁の父親の場合が多い。父親等の場合が多いのは父親による教育観の社会文化的な影響があるように思える。

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性的虐待は圧倒的に父親等の場合が多いが、実父の割合は少なく養父・継父の割合が最大である。これは血縁に無いことが倫理感を麻痺させている可能性があろう。一部だが、実母による性的虐待も見られる。母親等による性的虐待は多くの場合、被害児童が男児であるため、被害を深刻に受け取られないという社会文化的な障壁で暗数となっている可能性がある。

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ネグレクトは圧倒的に実母の場合が多い。これも子どもの面倒は母親が見るべきという社会文化的な影響が背景にある可能性が高いであろう。


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