児童虐待の件数推移(1997~2018年)

児童虐待の公的統計には児童相談所の相談件数と警察庁の通告児童数の統計がある。

厚生労働省統計・児童相談所での相談対応件数(1997~2018)

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全体の相談件数は一貫して増加しており、虐待の内容別でも同じく増加傾向。
性的虐待は全体数と比較すると少ないが、発覚しにくい・相談しにくいという性質上の影響も考えられる。

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心理的虐待の増加傾向は特に著しい。身体的虐待やネグレクトの増加が比例的であるのに対し心理的虐待の増加は指数関数的であり、特異的な要因があることがうかがわれる。

警察庁統計・通告児童数(2006-2019)

児童虐待の統計として厚労省統計とは別に警察庁統計もある。
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全体の通告児童数の増加傾向、虐待の内容別の増加傾向は厚労省統計と近似している。

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心理的虐待の増加傾向は警察庁統計でも著しい。警察庁統計では2012年度以降、心理的虐待の内訳として面前DVの件数も集計している。

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面前DVが大きな割合を占めているのがわかる。

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面前DVの増加傾向が指数関数的であることがわかるが、それ以外の心理的虐待の増加傾向も指数関数的であることがわかる。

心理的虐待が増加しているのか?

児童虐待の件数増加は、虐待に対する社会の感度が上がったことが大きな要因と思われるが、特異な増加傾向を示す心理的虐待には別の要因も考えられる。
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児童相談所への相談件数の推移を経路別で見ると、警察からの報告が特に2011年度頃から急速に増加していることがわかる。2010年の大阪2児餓死事件などで公的機関の児童虐待対応への批判が強くなったことが影響している可能性もある。児童虐待でなくても夫婦喧嘩であれば近所から警察に通報され、対応した警察は夫婦間の暴力事件ではなかったとしても、子どもに対する面前DVとして念のため児童相談所に連絡したためかもしれない。
また、面前DV以外の心理的虐待は警察沙汰になりにくいと思われるにもかかわらず顕著な増加傾向を示しており、別の要因があるのかも知れない